ルールベースの人口知能

コンピュータが人間のように考えるという夢のような話が「人口知能」である。

あるとき、大学教養課程レベル(成績のよい高校生が学習できる課程)の化学の問題をコンピュータに解答させようとするテーマを考えた連中がいた。この課題を達成することにより、人口知能を実現しようとしたのである。このプロジェクトは、ある意味では成功した。コンピュータは多くの問題で合格点を得ることが出来たのである。

ところが、このプロジェクトは別の意味では失敗した。すなわち、コンピュータを教育すること(この場合は構造化されたデータを入力すること)に膨大な時間と費用を取られることが分かったのである。

人間の高校生なら3年間みっちり勉強すれば、そのレベルに達することができる。それを勉強時間にすると、1日0.5時間(多くの科目のなかで化学に費やせるのはその程度)として3年間で約500時間である。これに対しこのプロジェクトでは、コースの教科書全70ページについて1ページあたり1万ドルの費用を必要とした。これを延べ時間で概算すると、エンジニアの時間給を30ドルとして、のべ20000時間を費やしたことになる。もちろん、この中にはエンジニアに対する教育のための時間は含まれていない。

この失敗は、このプロジェクトの人工知能がルールベースであったからである。ルールベースでは、知識をきちっと体型付けてコンピュータに入力する。そのため、その知識ベースに沿った問題には非常に正確な解答ができる。ところが、そこから一歩でもはずれた質問には全く対処できない。そして、何よりもコンピュータへの教育に、正確な知識を持ったエンジニアがつききりで当たらなければならない。

これでは、教育がボトルネックになってしまう。いくら処理速度が早くなりメモリが巨大になったとしても、ルールベースの人口知能ではその恩恵を一切、受けられないのである。